[…………] : 聖盃戦争、前夜…
[…………] : ある、裏の顔を持つ教会の敷地内に、突如虚空から電流が走った。
[…………]
:
その稲妻はどんどん広がり…
空に黒い穴を形作る。
[…………] : その中から、巨人とも見まごう異形の腕が、そして機械の瞳が見える。
[…………]
ターンX :
グググググ…
その黒い穴をこじ開けるように、機械の巨人がそこへ現れる。
異形の腕をカチカチと鳴らしながら、ゆっくりとこの地へ足を伸ばし、踏み入れた。
[…………]
ターンX :
「ハハハハ!!!ついに……ついに来たぞ!!!」
その機械の巨人は、頭の中から声を発する。
「あの忌まわしき繭に包まれてから何年かァ!!!」
[…………] ターンX : 「ロラン・セアックのあの繭から!!!このターンXの並行世界の運用を行う機能で!!!わざわざ異なる世界まで逃げてきたというのだ!!!」
[…………]
ターンX :
機械の巨人は大袈裟に手振りを行い、異形の腕を振り上げる
「この世界の下調べは!!!既に行ったァ!!!」
[…………]
ターンX :
機械人形はふわりと浮かび上がり、天を仰ぐ
「ククク、魔術、魔法!死徒に真祖!英雄たちに宇宙生命体!さらに星に自我とは!そのような御伽噺が存在する世界があるとはなぁ!!!それに黒歴史の彼方に消えたはずの西暦とはァ!!!」
[…………] ターンX : 「では手始めにィ!!!この世界における小生の誕生祝いだァァァァ!!!!!」
[…………] ターンX : 異形の腕から光の剣を放ち、目の前の教会に突き刺す
[…………] ターンX : 「黒歴史のォ!!!異端狩りのカトリックゥ!!!」
[…………] ターンX : 「小生に信じる神はいないが!!!その力!!!貰っていこう!!!!!」
[…………] ターンX : 闇夜に、光の剣の輝きがその巨体を照らす
[…………] ターンX : 全くの異世界からの介入、この世界の科学では説明のつかないその力
[…………] ターンX : 無論、この世界はその「異端」を見逃さない
[…………]
ターンX :
しかもこの事態だ。
所謂「エリート」が送られてくるのも早い。
[…………] ターンX : だが、その機械人形のパイロットは、それを知り、口角を吊り上げた。
[…………]
ギム・ギンガナム :
「来るがいい!!!聖堂教会!!!」
「このギム・ギンガナムとターンXが相手だァァァァ!!!」
[…………] : …
[…………] : ……
[…………] : ………
[…………] ターンX : 質量を無視し、人間大と化したターンXが、先切り裂いた青い布を投げ捨てる。
[…………] ターンX : 「フン…この程度か、たわいもない」
[…………] ターンX : もはや辺り一面焼け野原と化し、生きるものはこの機械を纏った男以外いなかった。
[…………]
ギム・ギンガナム :
ターンXを元の大きさに戻し、そこから飛び降りる。
彼は、先ほど切り捨てた相手から何かを奪い取る。
[…………]
ギム・ギンガナム :
彼が手に取ったのは、小さな十字架のようなもの。
見た目は何か本のページのようで、実際材質はその通りだった。
[…………] ギム・ギンガナム : 「これが世に聞く黒鍵という奴か。フハハハハハハハ、問題は小生がこれを扱えるかだが…」
[…………]
ギム・ギンガナム :
彼はそれを指で挟み、振り抜いた。
次の瞬間にはそこから刃が出ている。
[…………] ギム・ギンガナム : 「…小生ならば、当然か」
[…………]
ギム・ギンガナム :
彼はそのまま機械人形へ乗り込み、その場から飛び去る。
その際に広がった虹の翼は、まるで月の光のようで…
[…………]
:
[…………] : 聖杯戦争前夜、教会襲撃から数時間…
[…………] : 月の光を纏いし蝶は、英国・ロンドンに降り立っていた。
[…………]
ターンX :
ゆらりと身体を揺らしながら、空へと現れる。
その姿は、まるで神話の一場面のような雰囲気を醸し出していた。
[…………]
ターンX :
「やあやあやあやあやあ、魔術師諸君!!!」
その頭部から声が響く。と共に、その巨体は大袈裟に、訴えるように腕を振る。
[…………] ターンX : 「小生はコレクト・センチュリーよりやって来たギム・ギンガナム!!!交渉がしたい!!!」
[…………]
ターンX :
交渉とはいうが、それはまるで武力をちらつかせた脅迫であった。
「要求は単純だ。近く行われる儀式、それに利用できる黒歴史の英傑たちの遺物!それをちょいとこのギム・ギンガナムに譲ってほしいのだ」
[…………]
ターンX :
この派手さ、謎の機械人形、それに意味不明な単語の数々。
その場にいた魔術師達は、彼が何なのか図りかねていた。
ただのバカか、それとも…確かなのは、彼が魔術についての知識を持っていることくらい。
[…………] ターンX : 「抵抗するのならば…このターンX、最強の黒歴史の力慎みはせんぞ」
[…………]
ターンX :
だが無論、このような輩の要求に従うような勢力は少なくとも…
この世界には存在しないだろう。
[…………]
ターンX :
その巨体に、攻撃が突き刺さる。
…違う。
突き刺さっていない。受け止められている。
見えない力に。
[…………] ターンX : 「フハハハハハハハ!!!I・フィールドである!!!」
[…………]
ターンX :
次の瞬間その巨体は異形の右腕から光剣を発し、振るう。
「警告はァ!!!したはずだァ!!!!」
[…………]
:
[…………] : …………
[…………]
ターンX :
またも、その巨体が立っていた場所は焼け野原となった。
その圧倒的な火力、圧倒的な防御力、寄せ付けるものなど何もないと言わんばかりに。
[…………]
ギム・ギンガナム :
「…なるほど、これは良い」
焼け野原と化したその場から、一つ焼け残ったものを持ち上げる。
[…………] ギム・ギンガナム : 持ち上げたそれには、紋章がひとつ。
[…………]
:
[…………]
ギム・ギンガナム :
「この紋章…小生もまた見たことがある…」
「確か黒歴史の悪魔とかいう!!!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「これは貰っていく!!!このギム・ギンガナムの名の元に!!!」
彼はそれを持ち、再び巨体へ乗り込む
[…………]
ターンX :
蝶は再び羽ばたき、闇夜へと消えていく
全ては、自らの主人の目的の為に…
[…………]
:
[…………] : 現在
[…………] ギム・ギンガナム : 「ターンXは休眠中だ、当分動けやしない」
[…………] ギム・ギンガナム : 借りた部屋で、足を組みながらその男はくつろぐ
[…………] ランサー : 「だから、この俺を運用していると言うのか」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「その通りだ、黒歴史の英雄よ」
ニヤリと笑い、その騎士を眺める
「その力…先の小娘との戦いで見させてもらった。流石だ」
[…………]
ランサー :
「あのお嬢さんも油断できる相手ではなかった」
「この状況、容易くどうにかなるものではないぞ」
[…………] ギム・ギンガナム : 「あぁ…あの女…黒歴史の映像で見たような…」
[…………]
ギム・ギンガナム :
男は思考を巡らせる。
月で見た映像に確か、彼女と似たような人物が…
[…………] ギム・ギンガナム : 「確かファイル.P.M.5892の映像にアイツのような女が写っていたような…いなかったような」
[…………] ギム・ギンガナム : 膨大な黒歴史の映像を彼はほぼ全て記憶している。それだけが過去の戦いや歴史を彼に教えてくれるものだったから。
[…………] ギム・ギンガナム : 「ああ、思い出した、確か名前は■リ■、写っていたファイル名は……」
[…………] ギム・ギンガナム : 「L■■■■■■ C■■■■■■…」
[…………] ギム・ギンガナム : 「……まあ、そんなことはいい。考えるべきはこれからの身の振り方だ」
[…………]
ギム・ギンガナム :
椅子から立ち上がり、腕を振り上げる
「この英雄達が集いしこの場で、このギム・ギンガナム、できる限り多くの猛者と剣を交えることを望む!!!」
[…………] ランサー : 「…マスター、アンタは戦えればそれで充分なのか?」
[…………] ギム・ギンガナム : 「何、小生とて戦いだけを望む人間ではない」
[…………] ギム・ギンガナム : 「ただ…今のこの環境を楽しんでみたいのだ。我が弟との感動の再会の手段について考えるのは、それからでいい」
[…………] ランサー : 「そうか…俺もまた…」
[…………]
ランサー :
ランサーは自らがここにいる理由を自分に問う。
それは……
[…………] ランサー : 奇しくも目の前の男と同じ、強者との決闘だった。
[…………]
ランサー :
主人を守れなかったあの日。
赤い戦乙女に、あの金髪の男に手も足も出なかったあの屈辱。
[…………]
ランサー :
俺は戦わなくてはならない。
腕を上げなければならない。
主人がまた、自分を必要とする時の為、強くならなければならない。
[…………]
ランサー :
その為には…
この戦いで、英雄達と戦うことこそが…
[…………] ランサー : 「…俺もまた、それを望んでる」
[…………] ギム・ギンガナム : 「そうか、では我らの闘争本能の赴くままに」
[…………] :
[…………]
ギム・ギンガナム :
戦いを見ていた男が一人。
ギム・ギンガナム。
[…………] ギム・ギンガナム : 「ハッハッハッハ!!!この小生を放っておいてこのような愉快な催しをしていたとはなァ!!!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
その戦いを見届け、満足げに笑う。
これを求めてここまで来たと言わんばかりに。
[…………]
ギム・ギンガナム :
「そうだあの男!見覚えがある!」
彼は、その戦いの模様を思い返して黒歴史に思いを馳せる。
[…………] ギム・ギンガナム : 「確か…ファイルA.D.3599の…」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「そうだ思い出した、ミラクル・ヤン!自由惑星同盟の…」
興奮した彼は、かつて見たその映像の情報を次々と思い出す
[…………] ギム・ギンガナム : 「あの魔術師がこの戦場にいる!!!一戦交えてみたいものだなァ!!!ハッハッハッハ!!!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「にしても…」
振り返って
「一人、このギム・ギンガナムとランサーと剣を交えずに退場してしまったようだ
残念だ…一度剣を交えてみたかったのだがァ!!!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
月夜を見上げて
「だが…まだ猛者達は多くいる 待っていろ、英雄達よ!このギム・ギンガナムとの戦いを!!!」
[…………]
:
[…………]
ギム・ギンガナム :
「ククク……」
その男は、頭を指で叩きながら、今までの戦いに思いを馳せる。
[…………]
ギム・ギンガナム :
「どれどれ…キャスター・ジル・ド・レェ、時臣の従えていたアレか
ククク、世間一般に讃えられるモノとは逸れていても、英霊となるに相応しい」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「…バーサーカー、スペック…我がランサーを素手の暴力であそこまで追い詰める、卓越した身体能力…
武人や騎士といった類ではないが、自らの力に誇りを持った戦士であることは確かだった…」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「それと、■リ■似の小娘が従えていたのはアーチャーだったか。弓兵というにはおかしな武器だったが…
ランサーの槍を少しでも受け止めるとは、油断ならぬ相手だ…」
[…………] ギム・ギンガナム : 「セイバーとやらのマスターが戦場に立つ暇すらなく殺されていて…」
[…………] ギム・ギンガナム : 手に持ったカードを一枚ずつ落としていき
[…………]
ギム・ギンガナム :
「残るは、アサシンとライダーか。
暗殺者と騎兵…どちらも我がランサーの誇り高い決闘を受けてくれるような相手には思えんな」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「ライダー…恐らくあの女が従えていたガスマスクの男か…
騎兵のようには見受けられんが…持っていた武装は投擲銃か?」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「何より、主従関係であるに関わらず奴らには何か、お互いに近いものを感じる。何かあるのか?
奴らも黒歴史の記録内に確か…いや、今はいい」
[…………]
ギム・ギンガナム :
拳を振り上げて
「そしてアサシン!!!
奴の名はこのギム・ギンガナムも知るところ!!!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「ヤン・ウェンリー!
自由惑星同盟の戦術家にして奇跡の男!
類稀なる才能を持ちながら一軍人の域を決して出ようとしなかったとも聞く!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「それほどの男が願望機にかける願いとはなァ……
小生としても少し気になるところ!
だがそれ以前に小生も一人の武人、銀河の伝説に名を刻んだ英雄と一戦交えられることに興奮している!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「出来ることなら、ギンガナム艦隊を連れて戦術戦と洒落込みたいところだが…
ははは、流石に勝てる相手ではないかな?」
[…………] ギム・ギンガナム : 「フン…だが裏を返せばこの一人の武力が戦況を左右する状況では、このギンガナムにも、あの奇跡の男に付け入る隙があるというわけだ」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「優秀な指揮官が、優秀な戦士であるとは限らない…
騎士、武士としての決闘ならば、勝ち目のない相手ではない…!」
[…………] ランサー : 「…そうだな。俺も、負けるつもりはない」
[…………]
ギム・ギンガナム :
「たぁのもしいじゃあないかランサー!
期待しているッ!」
[…………] ランサー : 「応えられるとは限らないが、応える努力はする」
[…………]
:
[…………]
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[…………]
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[…………] : ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀ ∀…
[…………] : …………
[…………]
ギム・ギンガナム :
「……またここか。
小生も成長しないものだ」
[…………] ギム・ギンガナム : 繭に包まれてやってきた、白い暗闇にそう呟く。
[…………]
ターンX :
……
新たな傷が刻まれたそれは、きっとまだ上手くは動かない。
[…………]
ギム・ギンガナム :
「だが…
一度出られたのだ。
二度できぬ道理はない」
[…………] ターンX : ボロボロになった異形の右腕を、少しずつ治しながら振り上げる。
[…………]
ギム・ギンガナム :
「そうだせっかくだ。
この素晴らしい戦いの記録を、新たな歴史として残そうではないか」
[…………] ギム・ギンガナム : 「名前は…そうだな」
[…………] ギム・ギンガナム : 「機動戦争・ターンXガンダムというのはどうかなァ!!!」
[…………]
ギム・ギンガナム :
白い虚無の中で、彼の笑い声が響く。
次に彼が流れ着く世界は、果たして…
[…………] :
[…………] :
[…………] :
[…………] : 光の種が落ちる。
[…………] : 届くはずのない場所へと。
[…………] : ……『歴史を作る』エゴを果たさんと。
[…………] :
[…………] :
[…………] :